川の事故
川でカヌーをやっているとどうしても事故の危険性はあります。分類すると、
1.沈脱した後、低い水温の中を長時間泳いで体温が下がりハイポサーミアによる死亡
2.カヌーごと、もしくは脱した後、流れにより水中の障害物に体が押し付けられて呼吸が続かず溺死。渦につかまって溺死することも。
3.沈したときの打ち所が悪く大怪我をし、それによる死亡
もちろん複合的な要素がからむこともあり、岩に頭をぶつけた衝撃で水中で意識を失い溺死とかもあるでしょう。
幸いにして、私のこぎ仲間が私と一緒に川を漕いでいる時に、死亡事故を起こしたという経験はありません。しかし、たまたま漕いでる同じ日に、別グループがその川で死亡したというケースが3例ほどあります。
一例目は四万十川の半家の沈下橋。
こちらは最近撮影した写真ですが、94年GW期間、私が初めて四万十川を下った時、二人乗りファルトボートがここの橋脚に横向きに張り付いて真ん中で折れ曲がり、前席に乗った女性が死亡するという事故がありました。私たちは午後遅くに通過して少し下流の河原でキャンプしたのですが、上の民家に水を分けてもらいに上がったところ、昼過ぎに事故があったとの話を聞いて衝撃を受けました。
我々が通過するほんの数時間前の事故です。その方の話では、若い看護婦の方と男性の二人乗りで、橋脚のすぐ上から漕ぎ出し、流れに押されてそのまま横向きに張り付いたようだとのこと。フネが折れ曲がり、後ろの席の男性はおそらく水流で押し流され、前の席の女性は足がフレームに挟まれ抜け出せず、流れに押され水中で身動きが取れなくなったのでしょう。せっかくの楽しいはずの休日がほんの一瞬のミスで最悪の事態に。
この沈下橋の対岸は広い河原でキャンプにも最適。川下りせずともキャンプにカヌーを持ち込んで流れで遊びながら一日を過ごす、そんな楽しみ方もできる場所ですが、10年たっても川の流れは相変わらず橋脚に絡んでおり。流れに立つ橋脚の怖さを改めて実感できます。
二例目は長良川。
こちらは97年3月。死亡した方は当時の日本のロデオ界ではトップパドラーの一人と目された方。前日そのグループの方数名と一緒に漕いで、翌日は我々は美並~木尾を、彼ら(雑誌で名前をよく目にするそうそうたるメンバー)のグループは木尾から下流を下り。木尾で色々と話して別れて川下り。帰り、夕方遅くにもかかわらず、そのグループの車が河原に残っていて、「まだ漕いでるんだ、さすが元気だね」などと噂しながら帰宅して翌日。仲間から事故のニュースを。
当時、パソコン通信で話題があがり、野次馬的な興味本位の詮索が当事者の心を逆なでしたりということもあって、私も当日の自分が知っていることも封印して、何が起きたかもあえて聞かないままでしたが。流れが岩にあたるところの下がえぐれた部分に水中でフネごと張付いて脱出できず溺死した、と伝え聞いています。水量は比較的多かったものの、流れの困難度としてはそれ程高くも無く、そういった状況でも日本トップクラスの漕ぎ手が仲間と一緒に漕いでいても死亡事故を起こしてしまうこともある、改めてカヌーで遊ぶことの怖さを知った事例でもあります。
三例目は利根川。
利根川の水上地区は雪解け期のみ水がある国内でも屈指の激流コース。四国吉野川の大歩危小歩危と並べられることが多いものの、水温が極端に低いこと、流れが連続することにより、何かあったら死亡事故に直結します。当日の水量は100t。水上のNHK杯会場のざら瀬が一面の早瀬で諏訪峡まで速い流れが続き、沈脱したら相当の距離を流される状況。私たちも商業ラフトのアシストカヤックもこなす方と一緒だったのでこぎましたが、そうでなかったらこの水量の諏訪峡には入るのをためらう状況。
99年の雪解け期、丁度スラロームNHK杯の練習を兼ねて親子で漕いでいたあるショップのメンバーの親が沈脱、長時間流されてハイポサーミアで死亡。当時の私の漕ぎ仲間がたまたま同じショップのメンバーだったこともあり、夕方のキャンプでは携帯に色々な話が飛び込んできました。私は直接面識は無かったのですが、息子の目の前での死亡事故という残酷な状況に言葉もありませんでした。
関東在住の間、カヌーから遠ざかったのは、仕事が忙しかったのもありますが、やはりこの利根川の事故が大きな影をおとしてたかな、と今にして思えば。
ヒヤリとした経験はどなたにもあるはず。
1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300のヒヤリが存在する、労働災害におけるハインリッヒの法則という経験測ですが、川の事故も同じかもしれません。たまたま運が良かっただけのヒヤリ、武勇伝にしてしまわず、忘れてしまわず、事故につながらないように安全を意識して楽しみたいもの。
1.沈脱した後、低い水温の中を長時間泳いで体温が下がりハイポサーミアによる死亡
2.カヌーごと、もしくは脱した後、流れにより水中の障害物に体が押し付けられて呼吸が続かず溺死。渦につかまって溺死することも。
3.沈したときの打ち所が悪く大怪我をし、それによる死亡
もちろん複合的な要素がからむこともあり、岩に頭をぶつけた衝撃で水中で意識を失い溺死とかもあるでしょう。
幸いにして、私のこぎ仲間が私と一緒に川を漕いでいる時に、死亡事故を起こしたという経験はありません。しかし、たまたま漕いでる同じ日に、別グループがその川で死亡したというケースが3例ほどあります。
一例目は四万十川の半家の沈下橋。
我々が通過するほんの数時間前の事故です。その方の話では、若い看護婦の方と男性の二人乗りで、橋脚のすぐ上から漕ぎ出し、流れに押されてそのまま横向きに張り付いたようだとのこと。フネが折れ曲がり、後ろの席の男性はおそらく水流で押し流され、前の席の女性は足がフレームに挟まれ抜け出せず、流れに押され水中で身動きが取れなくなったのでしょう。せっかくの楽しいはずの休日がほんの一瞬のミスで最悪の事態に。
この沈下橋の対岸は広い河原でキャンプにも最適。川下りせずともキャンプにカヌーを持ち込んで流れで遊びながら一日を過ごす、そんな楽しみ方もできる場所ですが、10年たっても川の流れは相変わらず橋脚に絡んでおり。流れに立つ橋脚の怖さを改めて実感できます。
二例目は長良川。
こちらは97年3月。死亡した方は当時の日本のロデオ界ではトップパドラーの一人と目された方。前日そのグループの方数名と一緒に漕いで、翌日は我々は美並~木尾を、彼ら(雑誌で名前をよく目にするそうそうたるメンバー)のグループは木尾から下流を下り。木尾で色々と話して別れて川下り。帰り、夕方遅くにもかかわらず、そのグループの車が河原に残っていて、「まだ漕いでるんだ、さすが元気だね」などと噂しながら帰宅して翌日。仲間から事故のニュースを。
当時、パソコン通信で話題があがり、野次馬的な興味本位の詮索が当事者の心を逆なでしたりということもあって、私も当日の自分が知っていることも封印して、何が起きたかもあえて聞かないままでしたが。流れが岩にあたるところの下がえぐれた部分に水中でフネごと張付いて脱出できず溺死した、と伝え聞いています。水量は比較的多かったものの、流れの困難度としてはそれ程高くも無く、そういった状況でも日本トップクラスの漕ぎ手が仲間と一緒に漕いでいても死亡事故を起こしてしまうこともある、改めてカヌーで遊ぶことの怖さを知った事例でもあります。
三例目は利根川。
利根川の水上地区は雪解け期のみ水がある国内でも屈指の激流コース。四国吉野川の大歩危小歩危と並べられることが多いものの、水温が極端に低いこと、流れが連続することにより、何かあったら死亡事故に直結します。当日の水量は100t。水上のNHK杯会場のざら瀬が一面の早瀬で諏訪峡まで速い流れが続き、沈脱したら相当の距離を流される状況。私たちも商業ラフトのアシストカヤックもこなす方と一緒だったのでこぎましたが、そうでなかったらこの水量の諏訪峡には入るのをためらう状況。
99年の雪解け期、丁度スラロームNHK杯の練習を兼ねて親子で漕いでいたあるショップのメンバーの親が沈脱、長時間流されてハイポサーミアで死亡。当時の私の漕ぎ仲間がたまたま同じショップのメンバーだったこともあり、夕方のキャンプでは携帯に色々な話が飛び込んできました。私は直接面識は無かったのですが、息子の目の前での死亡事故という残酷な状況に言葉もありませんでした。
関東在住の間、カヌーから遠ざかったのは、仕事が忙しかったのもありますが、やはりこの利根川の事故が大きな影をおとしてたかな、と今にして思えば。
ヒヤリとした経験はどなたにもあるはず。
1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300のヒヤリが存在する、労働災害におけるハインリッヒの法則という経験測ですが、川の事故も同じかもしれません。たまたま運が良かっただけのヒヤリ、武勇伝にしてしまわず、忘れてしまわず、事故につながらないように安全を意識して楽しみたいもの。
by river_paddling
| 2007-06-19 22:00
| 昔の話題